2008年の初めに


 2007年は官民挙げて、「偽装に始まり、隠蔽に終った」という感じの1年であった。
食品関係の老舗や、世間に名の知れた会社が平然と偽装し、厚労省が薬害エイズ問題で何年か前、大失態を犯したにもかかわらず、性懲りもなく肝炎問題でも同じ過ちを犯し、再びその真実を隠蔽した姿には、ただただ唖然とさせられるしかない。だが、そのような体質は、最近急に始まったものなのであろうか?恐らく「否」ではないかと思われる。
 戦後60年間、ひたすら経済発展を目指し、その勤勉で均質な国民性を背景に、見事経済大国にはなったものの、反面、戦後の個人主義的教育とも相まって、徐々に「自分さえ良ければ」という風潮が蔓延した結果が、今日のように、あらゆる分野での精神性の堕落をもたらしたのであろう。
 それにしても、民間の様々な問題もさることながら、この国の官僚の退廃ぶりはここに極まったという感じがしてならない。更に言えば、本来彼らを指揮・監督すべき政治家の質的低下こそが、なお一層の問題点なのだろう。
 厚労省は前記の薬害問題に関する度重なる不祥事だけでなく、あの社保庁に対しても、長年にわたり何らの改革意識も持たず、更には、ワーキングプアと呼ばれるような弱者が、不法に働かされている実態を知りながら、正面からこの問題に切り込まなかったこと等々、国民など全く「蚊帳の外」であり、頭の中はすべて自分たちの「天下り先」のことばかりなのであろう。勿論、厚労省だけが例外なのではなく、今回たまたま国民の命や暮らしに直結する問題が顕在化したので彼らが目立っただけで、他のどの省庁も全く同様である。
 防衛省のスキャンダルなどを見ても、よくぞここまで誰も問題提起をしなかったのか、はたまた、なぜあのような人物をわざわざ任期延長までして、4年間もトップの事務次官にさせていたのか、呆れ果てるとしか言いようがない。こんな組織が、有事の際に十分機能するとは到底思えない。
 官僚をここまでのさばらせ、放置してきた政治家の責任は極めて重い。にもかかわらず、先の特殊法人改革に当っても、渡辺行革大臣だけが孤軍奮闘し、各省の大臣などは単なる官僚どもの代弁者にすぎず、肝心の福田総理や町村官房長官などまでもが全く後ろ向きで、逆に渡辺大臣の足を引っ張る姿に、この国の「根本的病根」を改めて見せつけられた。
 年金問題での社保庁の役人の対応で判ったことだが、例え大臣が指示命令しても、資料さえ提出しないという組織が官僚の世界であり、それでも彼らに何のペナルティーも与えないという摩訶不思議な世界のようである。彼らをここまでのさばらせた政治家の責任は極めて重い。同時に、記者クラブ制度という「談合組織」にアグラをかいて、日本の官僚制度の根本的問題点を追求してこなかったマスコミ各社の責任もまた重大である。
 額に汗して一生懸命働いても、年収200万円程度しか稼げない人たちが多くいる中で、その存在価値など全くなくなった特殊法人を渡り歩き、多額の年収と退職金を貰うような役人たちの無駄をそのままに、消費税アップの議論など論外である。
 官僚との長年の癒着にまみれた自民党には、もはや期待はできないということで、政権担当能力など到底期待できるとは思えない民主党に、「官僚制度の抜本的改革」という一点の期待だけを寄せて、次期衆議院選挙で、一度政権交代させるべきかと考えていた。
ところがその矢先における、小沢代表も交えた例の「大連立構想」騒動であった。衆参のねじれ現象のため、法案が通りにくいから連立して「足して二で割る」昔ながらの手法をまたぞろ取ろうとしたのだが、それでは民主党の掲げる官僚制度改革など「夢のまた夢」にしかならないことを、小沢代表はどう説明するのであろうか?もはや与野党に限らず、老人達には粛々と引退してもらい、次世代を担う若い人にバトンタッチすべきである。
 閑話休題。
 昨年巨人は久々にセリーグ1位通過したものの、CSで中日に3連敗し、日本シリーズへの出場ができなかった。そのための反省か、今季は例によって金に糸目をつけず、3人の外国人選手を獲得したが、この球団も懲りない球団である。
 過去にも04年にローズ、小久保、高橋由、ペタジーニ、阿部、清原、江藤、元木等々の長嶋氏に言わせると「史上最強打線」を揃えたものの、結局優勝できずに「紙上最強打線」とまで揶揄されたのをもう忘れたのだろうか?例えあのメンバーで優勝したとして、どれだけの盛り上がりが期待できたというのだろうか?いくらスポーツでも、ただ単に勝てばよいというものではないということを、この球団の経営者はいまだに全く理解していない。
 思えば、少年時代には熱烈な巨人ファンであった自分が、次第に巨人という球団に違和感を持ち始めた最初のキッカケは、江川投手入団の際の「空白の一日」からだった。新人獲得のルールを自分勝手に解釈し、フェアであるべきスポーツにおいて、ホリエモン的な
やり方で、強引に江川投手を獲得した巨人という球団にガッカリするとともに、江川投手自身にも不快感を覚えたものであった。
 今年のセリーグはダントツの戦力を誇る巨人に対し、広島などはそれでなくても弱小球団なのに、黒田、新井という投打の主軸までもが去ってしまったため、対広島戦など巨人から見れば「赤子の手をひねる」ようなものであろう。そんな球団に勝って何が嬉しいのだろうか?聞くところによると、読売の渡辺オーナーは野球のことなど、本来全く無知だそうである。スポーツの真の楽しさが判らない人間に、引っ掻き回され続けている日本のプロ野球界は悲劇であり、ファン離れが止まらないのも当然である。
 先の自民、民主の「大連立構想」にも、この人物は深く関わっていたとのことで、正に「老害」そのものであり、一日も早い退場を願いたい。
 今年は本場でのMLB観戦計画はないが、2年目を迎える松坂、岡島、昨年不本意なシーズンを送り、あわやトレードか?とも言われた松井、地元シアトルのファンの期待に応えて、長期契約を結んだイチローらの活躍を願うとともに、今年新たにチャレンジする福留や黒田の活躍にも期待し、テレビの前で一喜一憂したいものである。

                                   以上            08.01.12  守山裕次郎