「不都合な真実」(An Inconvenient Truth)

 先般、地球温暖化をテーマとした「不都合な真実」というタイトルの映画を見ました。
この映画はアカデミー賞・長編ドキュメンタリー賞を受賞し、全米でのドキュメンタリー史上、記録的な大ヒット作品となっているそうです。
以下にその内容をご紹介します。
 人類にとって、かけがえのない地球が、今、最大の危機に瀕している。アフリカのキリマンジャロの雪が解け、北極の氷は年々薄くなり、各地にハリケーンや台風などの災害がもたらされる。こうした異変はすべて地球温暖化が原因といわれている。
年々、上がり続ける気温のせいで、地球体系が激変し、植物や動物たちは絶滅の危機にさらされている。
 このような現実を前に、アメリカの元副大統領アル・ゴア氏が、ある固い決意を胸に立ち上がった。温暖化によって引き起こされる数々の問題に心を痛めた彼は、人々の意識改革に乗り出すべく、環境問題に関するスライド講演を世界中で開き、地球と人類の危機を訴えてきた。
 そして、その真摯で、ユーモラスな語り口に共感した製作者が、彼を主人公にした映画の製作を決意し、現代人にとって耳の痛い問題を正面から描き、見る人すべてに大きな衝撃と感動を与えるヒューマン・ドキュメンタリーの誕生となった。決して他人事ではない環境問題を豊富なデータを使いつつも、パーソナルな視点でとらえ、見る人の意識を完全に変える、そのプリゼンテーション能力には感心させられた。
 ゴア氏は政治家として、長年、環境問題に取り組んできたが、その運動に突き進んだ本当の動機はとても個人的なものであった。89年に6歳の息子が交通事故に遭い、1ヶ月間生死の境をさまよった末、奇跡的に命を取りとめた。この時、将来の息子が生きる場所への危機感を強めたという。
 さらに追い討ちをかけたのが、2000年の大統領選でのブッシュへの敗北であった。その印象を「打撃だった」と劇中で率直に告白しているが、やがて彼は失意から立ち上がり、自分の本当に進むべき道を見出した。そしてスライド講演を決意し、自分の生の声で人々に温暖化問題を伝える活動を始めたのである。

 そこで明かされる驚愕の事実の数々。北極はこの40年間に40%縮小し、今後、50〜70年の間に消滅するといわれている。氷を探して100キロも泳いで溺死した北極グマの悲劇的なレポートも伝えられる。
また、数百万におよぶ渡り鳥が温暖化の被害を受け、種の絶滅の割合は過去の記録の1000倍に達しているという。さらにこの四半世紀の間に、鳥インフルエンザやSARSといった奇病も発生し、一昨年ニューオーリンズを襲ったハリケーン、カトリーナのような大きな自然災害も大幅に増えた。そして環境破壊のせいで、今後、20万人もの難民たちが大移動する、とも言われている。
 多くの政治家たちが耳を貸そうとしない「不都合な真実」。しかし、私たちが日々の暮らしの中で小さな努力を重ねることで、地球を変えていけるとゴア氏は訴える。それぞれの問題は日常生活の中でつながっており、車の排気ガスを減らすことや、自然エネルギーを取り入れることで、事態は確実に改善されていくと強調する。
 しかしながら本当に改善できるのだろうか?私自身はちょっと悲観的です。何故ならば

1.温暖化の元凶である二酸化炭素の排出量を規定した「京都議定書」ですら、最大排出国の米国や2番目の中国等が批准しておらず、今後更にインドやブラジル等の発展途上国の排出量が増えることが予想される。(日本や欧州のように例え批准していても、その目標をクリアすることは至難の業なのが実態である)
2.そもそも温暖化に関係する地球上の大気圏は、宇宙から見るとよく判るが極々「薄皮」でしかない。その「薄皮」でできている大気の組成の微妙なバランスの上に、現在の地球環境が保たれている。(奇跡の星といわれる所以である)
3.何億年もかけて蓄積された石炭や石油等の化石燃料を、高々100年や200年間で一挙に使い切ってしまって(すべてを燃やす訳ではないが)その影響が「薄皮」に及ばないと考える方に無理がある。


 この冬の日本列島の記録的な暖冬はご承知のとおりです。私などは思い切って、「スノータイヤ」への交換を止めてみましたが、全く問題なく過ごすことができました。2月でもポカポカ陽気の日が続き、大変楽に過ごせた冬でしたが、これで本当に良いのだろうかと考えたのは、私だけではなかったと思います。
 映画の中でも紹介されていましたが、カエルがお湯の中にいきなり入れられると、熱くて驚いて飛び出てしまう。一方で、常温の水に入れた状態から徐々に温度を上げていくと、飛び出すことはしない代りに、ある温度で死んでしまうという有名な例え話があります。
 まさに現在の地球もそのような状況にあり、人類は自ら得た科学技術の恩恵ゆえに、そのマイナス面のコントロールができず、知らず知らずで気がついたら時すでに遅く、自ら招いた人類滅亡の日がそれほど遠くない将来にやってこないとも限りません。
 この問題解決の難しさは、我々先進国の論理だけでは通用しない点にあります。基本的には圧倒的な人口を抱える発展途上国、あるいは後進国の人々にも文化的生活を享受する権利がある訳です。しかしながら彼らすべてが先進国並みの文化水準になろうとすれば、地球環境は大きく破壊されるというジレンマにあり、複雑な利害が絡む国際政治の中で、どこまで有効な解決策が実行できるのかは極めて疑問です。
 一説によると、このままのペースで二酸化炭素を排出すれば、あと10年後がターニングポイントだそうです。すなわちこのままの状態を放っておいた場合、10年後以降に例えどのような対策を講じても時すでに遅く、地球環境は破滅的な温暖化に向かってまっしぐらという説です。もしもこの説が残念ながら正しいとすれば、現在の状況は極めて深刻です。
 この現実を前にして、私自身悲観的にならざるを得ませんが、いずれにしてもこの現状認識を一人でも多くの人々が共有し、それぞれの立場で今何ができるのかを真剣に考えることこそが、現代を生きる我々にとって、次世代の人々に対する最低限の義務ではないかと考える次第です。
(この映画の鑑賞を是非ともお勧めします)                   以上

07.04.16 守山裕次郎