琵琶湖鳥人間コンテスト


 去る7月26(土)〜27日(日)に彦根の松原水泳場で、毎年恒例の「鳥人間コンテスト」が実施された。このイベントは1977年に始まり、今年で第32回目を迎えたそうであるが、その模様は読売テレビ系列で放映され、今年も9月15日に、2時間番組での全国放送が行われていた。
 このコンテストは「自作人力飛行機による、飛行距離と飛行時間を競う大会」であり、今回は「滑空機部門(グライダー方式で飛び出し、距離を競う)」と「人力プロペラ機タイムトライアル部門(往復2km程度の距離を人力飛行機で飛び、その時間を競う)」並びに「人力プロペラ機ディスタンス部門(飛行距離を競う)」の3部門が実施された。
 今年は「滑空機部門」と「人力プロペラ機タイムトライアル部門」が7月26日(土)に、「人力プロペラ機ディスタンス部門」は7月27日(日)に行われたのだが、今回初めて現場でその模様を見ることができた。(7月27日:7歳の孫と共に) 実は私は現在、出身大学の同窓会の京滋支部幹事を担っており、春先の幹事会での議論の中でこの大会のことが話題になった。毎年現役の後輩達のチームが、暑い中を東京から
はるばる琵琶湖に来て、この大会にチャレンジしている様子をテレビで見ていたが、特に昨年は「ディスタンス部門」で見事優勝したこともあり、今年は我々先輩としても、物心両面の応援を是非しようという結論になった次第である。
 今回参加の母校チーム責任者に確認したところ、今年は応援団も含めて70名余りが参加するとの話しを聞き、知人から掻き集めた「クーラボックス」5個にスポーツドリンクやお茶、更には栄養ドリンク等を詰めて氷で冷やし、前日の土曜日の晩に、彦根の宿泊先のホテルへ差し入れしたところ、後輩の皆さんは大変喜んでくれた。

 7月27日の朝、7歳の孫を誘って彦根の松原水泳場へと出かけた。当日は8時半頃現地に到着したが、すでに朝6時過ぎから大会は始まっており、最初に飛んだ東北大のチームが、驚くことに沖ノ島近くまでの往復36kmの最長距離の飛行に成功しており、すでに優勝を確定させているとの話には大変ビックリさせられた。(後から同じ距離を飛ぶチームが出た場合には、同時優勝になるとのことであった)
 現場では湖の岸から沖合100mほどの所に、高さ10mほどのプラットホームが組まれており、ここから一挙に湖に向かって飛び出し、滑空または飛行するようになっていたが、翼の長い飛行機を岸辺からこのプラットホームまで運ぶのが、まずは一仕事であることが良く理解できた。各チームとも10名近くのメンバーが岸辺で飛行機を支えながら待機し、前のチームが飛行を終えてから、徐々に順番に従ってプラットホームまで運び終わるのに、かなりの時間を要していた。(このような裏方達の苦労の様子は、テレビ放送では全く判らないものであった)

 当日の朝方、優勝した東北大のチームが飛行した頃には微風だったそうであるが、時間の経過と共に湖西から吹いてくる向かい風が徐々に強くなり、各チームとも飛行距離がなかなか伸ばせずに苦労していた。私が現地に到着した8時半以降では、唯一京大チームだけが2kmを越える飛行であったが、他のチームはいずれもそれ以下の距離であった。そしてはなはだしいチームになると、大応援団のエールを受けて飛び出したものの、直後にすぐ落下してしまい、飛行距離が100m以下という「滑空部門」の記録にも満たないような惨めなチームもあり、逆にこれがまたこのイベントの面白さにもなっていた。
 前年度優勝の我が母校チームは、ディフェンディングチャンピオンとして最終のフライト順で、当初の予定では10時半頃には飛び立つと聞いていたが、徐々に強くなった風の影響で各チームの飛行開始時間が遅れ、結局実際に飛び立ったのは12時ジャストであった。
すでに朝一番に飛んで、沖ノ島往復の36kmという大飛行で優勝を確定させていた東北大チームとの同時優勝を願ったのだが、強い風に流されて悪戦苦闘の蛇行を繰り返し、終には長浜側の岬からその姿を消してしまい、ほどなく着水した様子が、応援席近くの大スクリーンに映し出されていたが、結局飛行距離は1.5kmほどで、第3位にも入らない平凡な記録であった。
 すべてが終了し13時頃、近くのコンビニで弁当を買い、孫と一緒に遅めの昼食をとっていたところ、それまでの薄曇りで微風の天候が急変し、周囲の木々がなぎ倒されるかと思われるような強風(一説によると、ダウンバースト現象だった?)が吹き出し、湖面には激しい白波が立って、先ほどまでの状況とは一変していた。夕方のテレビニュースによると、この時飛行台のプラットホームの撤収作業を行っていた作業者3名が、突風で煽られた機材によって負傷したそうであったが、大会が1時間ほど前に無事終了できたのは大変幸運なことであった。
 このコンテストは人力飛行ゆえに、微妙な風の影響を大きく受けるということが、今回現場を見て良く判った。しかしながら、「運も実力のうち」であることも間違いなく、そのことは日常生活の中でも全く同様であり、この「運」を取り込めるような普段からの努力を、我が母校チームには期待し、来年の再チャレンジに向けて大いに頑張ってもらいたい。いずれにしてもこのイベントは、単に操縦士の努力だけではなく、1年間をかけての飛行機の設計・製作に携わる者、更には真夏の暑い中で飛行機を運搬する作業者や応援団等、ややもすると現代の若者が苦手とする「チームワーク力」が極めて重要な要素になっており、その意味においても大変素晴らしい企画であることが良く判った。
 大空に憧れを持つ多くの「鳥人間」たちが、真夏の琵琶湖にチャレンジし、力の限りに空を飛ぶという夢を実現させるこの大会を、来年も孫と一緒に是非現場で見ながら、後輩達の活躍に大いに期待したいと思った次第である。
                                     以上   08.09.25 守山裕次郎

写真編